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@teihakutou
2025年11月17日
なめらかな人
百瀬文
読み終わった
ここまで自分の感情を丹念に観察して赤裸々に綴れるのすごいと思った。
自身の身の回りや内面の話ばかりの中、急に現れる引用が印象に残る。
「生産的」な消費と「非生産的」な消費を区別し、後者のように無意味で無駄なものを「浪費」しまくることが人間の生を回復するのだ、みたいなことを書いていたのはたしかバタイユだったと思うけれど、わたしはたぶん元々そういうことに欲望してしまう人間なのだと思う。(p.182-183)
ルソーは「嘘をついても、自分にも他人にも得にもならず損にもならない場合は、それは嘘ではなく虚構(フィクション)である」と言う。こうした虚構(フィクション)は、もはや嘘ではなく、「言う義務のない真実の隠蔽」と同様であるのだと。
このくだりはとても興味深くて、一見それはあらゆる芸術、ひいてはすべてのフィクションというものを背定してくれるようで勇気づけられるのだけれども、一方で「隠蔽」という言葉のちくりとした鋭さが妙に耳に残りもする。そのやましさ自体から逃れることは誰にもできないんだよ、というような。
(p.232-233)

