久保みのり|書店よむにわ "しょうがの味は熱い" 2025年11月17日

しょうがの味は熱い
自分がすごく幸せに感じている結婚をもう一方が墓場だと思っているなら、こんなむなしいことはない。 男の人が首輪をつけた犬で私が鎖をしばりつけた杭になる、そんな関係性を築いたところでなにがうれしいのか、さっぱりわかりません。いまでもそう思っています。でも気が付けば私はいつも絃をつかまえておきたい顔つき、絃はいつも逃げたそうな顔つきになっていて、自然に望まない関係になっていきました。(p.124) 心当たりのある物語だった。結婚したいと相手に纏わりつくときに最も、好き・一緒にいたい・愛してるの周縁に暗闇を感じる。「幸せに感じている結婚」と奈世は言うけれど、未婚の状態で感じる幸せなど幻以外の何者でもなく。しかし3年も同棲をしておいて煮え切らない態度を取る人間を追い詰めるのは気持ちのいいものだ。もっと、もっと、「今」考えろ!と奈世を応援しながら読んだ。独身で読むのと既婚で読むのとでは、後味が違うかもしれない。楽しい本でした。
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