
jirowcrew
@jirowcrew
2025年11月17日

特性のない男: ウルリッヒとアガーテ
ローベルト・ムージル,
大川勇,
白坂彩乃
ちょっと開いた
「ウルリッヒは微笑みながら静かにこう言ったのだった。「千年王国を予言する、こんな言葉がある。神々にとって千年とは、たった一度の瞬きにすぎない!」それからふたりはまた寝椅子にもたれ、静寂が語る夢のような言葉にさらに耳を傾けた。
アガーテは考えた。「こんな世界を見せてくれたのはこのひとだけ。なのに彼はいつもそれを信じられなくなって、今みたいに微笑んでしまう!」
(第2章 遺稿部第46章)
千年も、世界も、
ウルリッヒの微笑みひとつに流されてしまう。
その微笑みはひとつの柔らかな終わりであり、次の千年の予言であるということ。
終わったのではなく、まだ始まってもいない。
ウルリッヒの微笑みとは、そんな実感に対するため息であり、未完の物語たちの接続詞。
