
さとう
@satoshio
2025年11月17日
傷の声
齋藤塔子
読み終わった
借りてきた
「あなたは読まない方がいいかもしれない」
そう何度も忠告されたのに、読んでしまった。
この本は、奥底に沈んでいた痛みが、静かに浮かび上がってくるような本だった。
私は共感性疼痛の傾向があって、誰かの傷や息の乱れを読むだけで、自分のなかにも同じようなものが入り込んでくる。だから読みはじめてすぐ胸がつまった。たった1行に触れただけで息が苦しくなり、本を閉じた日もある。
それでも、本を閉じても、気配は消えなかった。胸の奥にゆっくり残って、苦しいのに、どこか確かな感じもした。
アルコールに頼ってしまう理由が似ているところもあって、「これは遠くの誰かの話じゃない」と思いながら読んでいた。
読み終えるまで、ずっとしんどかった。けど、読んだことを後悔してはいない。
塔子さんは私よりひとつ上の26歳。
だけど来年からは、私が年齢だけを追い越していくんだと思うと悲しくなる。
本の中に死生観についての言葉があって、「死なない限り重石から解放されることはない。人生は重たい」という一文があった。
「少しでも楽になれていたらいいのに」とも、「生きていてほしかった」とも、どちらも軽々しくは言えない。私の言葉では、どうしても外側の安全な場所からの言葉になってしまう気がする。
ただ、その痛みを言葉にしてくれたこと。その言葉が、読んだ私の中で静かに生き続けていること。それを大切にしていきたいと思う。
痛みに触れるのはこわいけれど、その痛みが言葉になって目の前にあらわれたとき、自分の中にも名前のない“声”があったことに気づく。
この本は、その気づきを教えてくれた。





