やえしたみえ "動物化するポストモダン オタ..." 2025年11月18日

動物化するポストモダン オタクから見た日本社会
文章は平易で読みやすい。連想されることが多すぎて長文になった。 この本を手に取ったのは綿本おふとん『ひかりのくにの子どもたち』という漫画(最高の漫画です)に登場する「リオ」というキャラの世界観(キャラごとの固有スキルみたいなもの)がまさしく『動物化するポストモダン』であるからなのだけど、この本を読んだだけでは当然だがリオくんの境地には達せない。が、綿本先生の作品に通ずる部分は多い気がする。リオくんのことを知るにはそもそもポストモダンのことをもっと知る必要がある。 古い本(2001年出版)なので当然ながら内容も古いし、オタク批評本として読むと知らない事柄ばかりだし(私自身2001年生まれなので、文中に出てくるもので履修済の作品は本当に少ない)、はっきり言って「ゼロ年代ってそんな感じなの?」と思うところはある。ニディガとか好きな人は読むと良さそう(ニディガは履修してないので雑な感想)。 謝辞で筆者自身が述べているように「サブカルチャーを主題とする本は発刊したときにはすでに時代遅れであることが多く…」はここまでの感想でもわかるように本当にそのとおりで、もし新鮮なところがあれば若い友人のおかげだ、という旨の文章が続くがそれももう通り過ぎている。時代は令和だ。だというのに、どうやら2025年においても重版されているらしい。読んだ今なら納得できる。むしろ、今こそオタクに読んで欲しいと思う部分も多かった。 この本の二次創作に対する鋭い視線は、生成AIが猛威を振るう現在において、若いオタクたちにどのように刺さるのか。また、単純に現代のオタク・コンテンツを改めて批評することを試みたとき、何が生まれるのか。あんまりオタクじゃないので(?)こういった本には非常に疎いのだけれど、令和になって生成AIが出てから出版されたような類書はあるんだろうか?あるなら読みたい。なんというか、この分野そのものに関する関心が高まった。そういう意味でかなりの良書だと思う。 もちろんツッコミどころは多々ある。それは時代や思想が違うからというのもあるし、そうでない部分でもある(マークアップ言語であるHTMLをプログラミング言語と同一視しているとか)。でも面白いし、良い本だと思った。何よりおふとん先生の漫画を読む時の参考文献として使い倒したい。この本の参考文献になってるものも読みたい。 とにかくいろんな作品や日常の中の風景や最近読んだ本や政治のことや脳内に存在する様々な情報にこの本から触手が伸びてきて引っ張り出される感覚があった。良い体験だった。
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