綾鷹 "クララとお日さま" 2025年11月18日

綾鷹
@ayataka
2025年11月18日
クララとお日さま
クララとお日さま
カズオ・イシグロ,
土屋政雄
クララというAF(人工親友)とジョジーという身体が弱い少女の物語。 AI、親・友人との関係性、格差社会などをテーマに書かれている。 「わたしを離さないで」のときも思ったが、クララの語る世界が映像のようにイメージしやすい。 ・わたしがカパルディを嫌うのは、心の奥底で、やつが正しいんじゃないかと疑っているからかもしれない。やつの言うことが正しい。わたしの娘には他の誰とも違うものなどなくて、それは科学が証明している。現代の技術を使えば、なんでも取りだし、コピーし、転写できる。 人間が何十世紀も愛し合い憎み合ってきたのは、間違った前提の上に暮らしてきたからで、知識が限られていた時代にはやむを得なかったとはいえ、それは一種の迷言だった・・・・。カパルディの見方はそうだ。わたしの中にも、やつの言い分が正しいのではないかと恐れている部分がある。だが、クリシーは違う。わたしのようじゃない。自分では気づいていないだろうが、あれは絶対に丸め込まれない。だから、クララ、君がいくら巧みに役を演じようと、すべてうまくいってほしいとクリシー自身が望んでいようと、来るべき瞬間が来れば、あれはすべてを拒絶するぞ。なんと言うか、旧式な人間すぎるんだ。自分が科学に楯突き、数学に反対しているとわかっていても、受け入れられないものは受け入れられない。そこまで自分を広げられない。一方、わたしは違う。クリシーにはない冷徹さを内部に抱えている。君の言う優秀な技術者だからかもしれない。だから、わたしはカパルディみたいな男には普通の接し方ができないんだと思う。連中がやることをやり、言うことを言うと、そのたびに、この世でいちばん大切にしているものが自分の中から奪われていく気がする。言っていることがわかるかな ・考えるまでもないよ。ぼくとジョジーは一緒に育って、二人ともお互いの一部だ。そして二人の計画もある。だから、もちろん、ぼくらの愛は心からのもので、永遠だ。一方が向上処置を受けてて、他方が受けてないなんて、ぼくらには関係ない。それが答えだ、クララ。これ以外の答えはないよ ・ジョジーとぼくは、これから世の中に出て互いに会えなくなったとしても、あるレベルではーー深いレベルではーーつねに一緒ということさ。ジョジーの思いは代弁できないが、ぼく自身は、きっといつもジョジーみたいな誰かを探しつづけると思う。少なくとも、ぼくがかつて知っていたジョジーみたいな人をね。だから、嘘じゃなかったんだよ、クララ。当時の交渉相手が誰なのか知らないが、その人がぼくの、そしてジョジーの心の中をのぞけたら、君がだまそうとしたんじゃないとわかってくれるはずだ ・カパルディさんは、継続できないような特別なものはジョジーの中にないと考えていました。 探しに探したが、そういうものは見つからなかったーーそう母親に言いました。でも、カパルディさんは探す場所を間違ったのだと思います。特別な何かはあります。ただ、それはジョジーの中ではなく、ジョジーを愛する人々の中にありました。だから、カパルディさんの思うようにはならず、わたしの成功もなかっただろうと思います。わたしは決定を誤らずに幸いでした
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