りら "YABUNONAKA-ヤブノ..." 2025年11月18日

りら
りら
@AnneLilas
2025年11月18日
YABUNONAKA-ヤブノナカー
金原ひとみを読むのはたぶん4冊目かな。 初めて読んだのは芥川賞受賞後に「文藝春秋」2004年3月号に全文掲載された『蛇にピアス』で、あれから21年か。 著者と同世代なのであの頃は大学生だったけど、出版業界に身を置く者として、あるいは歳の離れた相手とのかつての恋愛を搾取だったのではないかと疑ったことのある者として、本当に痛烈な作品だった。 各章に名を冠された、絶えず自己分析せずにはいられない饒舌な登場人物の中でも、あらゆる事象を理詰めで論破する女性作家の長岡友梨奈にはどこか著者自身を重ね合わせてしまう。レスバの鬼のような彼女が下衆な男どもを罵倒し、肘鉄という名を鉄槌を下していく場面はその狂気含めて痛快だった。 ただ、彼女よりは、性的搾取を告発した橋山美津の方がより近しい存在に感じる。女性たちから連帯を得ることも叶わず、長岡にもこき下ろされる惨めったらしい作家のなり損ないだからこそ。 2回目の橋山の章からややミステリじみてきてドライブがかかった。告発の理由がすこんと腑に落ちた。 胃もたれ必至の重いこってりしたフルコースのような大作において、最後のリコの章だけは綿菓子のように軽やかで、発光しているかのようだった。突然もたらされる一筋の希望の光だった。 1.7→1.9倍速で。長かった。
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