ノエラプトル "異邦人" 2025年11月19日

異邦人
異邦人
カミュ
不条理小説として有名だが、個人的には悲しさや苦悩、絶望といったデカい負の感情が、不思議とそこまで感じられない終わり方だった。 あらすじだけ見ると衝撃的な話だが、文章としては淡々と、すっきりとしているし、どこか客観的で落ち着いた一人称視点*も、ショックを抑えている気がする。 面白いと思ったのが、主人公ムルソーの名は、「死」と「太陽」の合成語らしい。 結果的に最後は死刑にされるが、ムルソーとしては一貫して「嘘をつかなかった」だけ。 太陽の眩しさに目を奪われ、その光とともに不幸の闇の中に落とされてしまったけど、彼は死の瞬間までその光を手放さなかった。 この世界では「異邦人」とみなされながら、それでも自分の心を偽らなかった。 その結末に、絶望というより、いやむしろ絶望ではなく、彼の胸の内の強い輝きを見た気がした。 *→ただ、死刑を宣告された後、訪ねてきた司祭に己の死を憐れまれて、ムルソーは作中で初めて感情を爆発させる。 読んだ人の多くはそうだと思うが、もうそこでぐっとムルソーの魅力に惹き込まれた。
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