
gato
@wonderword
2025年11月20日

恐るべき緑 (エクス・リブリス)
ベンハミン・ラバトゥッツ,
松本健二
読み終わった
短篇を読み進めるうち、円城塔より初期の宮内悠介寄りかな?いや、これゼーバルトだな。などと思っていたら、あとがきで参考文献に『土星の環』を挙げていてやっぱりかとしたり顔になった。私は『移民たち』に似てるなと思ったけど。
ずっと西洋中心に回っていたお話が最後はチリにフォーカスしていくところはとてもよかったのだけど、説明せずとも伝わっているよ、と言いたくなることが言葉にされており、全体のクールなトーンが最後に損なわれてしまったように感じた。メッセージを誤解されずに届けたい気持ちはわかるのですが。
評伝っぽくなっていく「シュヴァルツシルトの特異点」以降もいいんだけど、「プルシアン・ブルー」の圧縮された歴史の語り方が非常に好みだった。キアラン・カーソン『琥珀捕り』のすべてが死と戦争に繋がっていくバージョンみたいな。あと創作キャラだと思いこんでいたグロタンディークとかがみんな実在する数学者でびっくり。かなり興味が湧いた。
