やえしたみえ "聖なるズー" 2021年12月1日

聖なるズー
聖なるズー
濱野ちひろ
発刊当時ポリアモリー界隈で話題になっていたので読んだ記憶がある。興味深い内容だった。 ポリアモリー界隈では「聖なるポリアモリー」を外部から求められているように感じるよね、みたいな盛り上がり方をしていた気がする。 記憶が曖昧になってしまっているが、人は「聖なる」ものでありたいのだと、清らかで倫理的でありたいのだと、そう思った。 ズーフィリアという、性的逸脱に思われるそれの当事者が語る「愛」。異種族との愛を信じ、その愛ゆえに赦されると考え行動に移す者たち。動物たちから真に合意をとることは不可能だが(子どもを犯してはいけないのと同じだ)、家畜やペットを劣悪な環境で繁殖させ殺すことと、パートナーとして愛しセックスすること、どちらの方がより悪なのか?と問われると、大衆の肌感覚によって決まるよな、と思う。大衆の肌感覚に合わせられなかったものたちも、清らかでありたい、自分たちは清らかだと主張したい、人は自分が「正しく」ありたいという欲求を止められない。 ポリアモリー界隈で盛り上がったのはそういう理由だろう。ポリアモリーは、浮気でも不倫でもなく、関係者全員に合意をとった、倫理的で正しい、聖なる複数愛を目指す人々のライフスタイルだからだ。生まれたときから大衆の肌感覚に合わなかった私のような人間はもうこういう命題を考えるのに疲れてしまったが、そうでない人々や、まだ考えたい人が読むのには良い本だろう。誰しも同じ人間であるとわかる。文章も読みやすかった記憶がある。
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