
riho
@skirh623
2025年11月21日
なにごともなく、晴天。
吉田篤弘
読み終わった
銭湯とコーヒーと探偵。帯に書かれたなんとも魅力的なワードに惹かれた一冊です。
10ページごとに区切られた物語は、まるで高架下商店街を渡り歩いていくような感覚で、楽しくもありとても読みやすくて。
あの、少し独特な雰囲気を持つ、綺麗に整備されているけれどどこかに秘密の抜け道や扉がありそうな不思議な高架下の雰囲気。そこで暮らす美子と、彼女を取り巻く人々の人間臭さと愛らしさ、物悲しさがなんとも言えないコーヒーの苦味と重なるようでした。
表紙のイラストがケーキなことが、10ページの区切りから解放された書き下ろしで紐解かれてほろりときたり。
あとがきの、「終わりが来ないことが、いつでも物語の希望なのだと確認した次第です。」という言葉が、あまりにも優しく強く美しく、ケーキの甘さとコーヒーの苦さが抱きしめ合うような幸福に包まれた読後感でした。

