内田紗世 "失われた「実家」を求めて" 2024年12月16日

内田紗世
内田紗世
@uchidasayo
2024年12月16日
失われた「実家」を求めて
子供だった頃には分からなかったことが今の自分に影響している。ふとそんな思いが頭によぎったとき、過去に向き合っても向き合わなくてもいい。筆者は家族にインタビューを試み、向き合おうとするがー。  自分とは異なるアプローチで別の道を進んでいる妹。子供に「ちょっとサイコパスっぽいっていうか」と言われる父親。自分の子供に大好きだと言う母親。  父親が筆者に対し「お前たち」と言う時と「あなたたち」と言う時の違い。結婚指輪事件には本当にびっくり仰天だった。ありえない…。こんなありえない人と家族を築こうとしたーあるいは、築けていないことに気付かなかったー母親も結構クレイジー感がでている。赤の他人で、この本を読んだだけの勝手な推測だけど、このご両親は自分たちが自分の親と対峙してこなかったから、自分の子供とも関係をあるべき形で結べないのかなと思ったり。父親はあまりにも価値観が違いすぎて、逆に割り切りやすい感じもする。その点が家族の中で悪者となり得た、そして本人がそれすら気にしない/修復を試みない性格ゆえかも。大人になってから知ったことだけど、母親は自分の夫の悪口を子供に話すべきではない。母親の原家族との関係も複雑そうで、自分の母親が死ぬときに全部ぶちまけると意気込んだって良いが、息子に話すべき内容ではないような……。聞かれたから答えたとか言うかもしれないけど、わきまえてほしいっていうか…。  親は自分の都合で子供を子供扱いしたり大人扱いしたりするが、子供の前では父親には父親として、母親には母親としていてほしい。それが子供を作った側の責任なのでは。彼らが自分の家族でなければ気にならなかったのに。死んでも縁が切れない強い関係。私は筆者のように対峙できないだろう。絶望的なほどの分かり合えなさを確認できないだろう。  作中、母親の口から上野千鶴子の名がでてくる。上野千鶴子を読んだうえで、こういう考えなんだとびっくりした。 年末に実家へ帰るのが億劫な人、あえて帰らない人におすすめの1冊。
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