
まお
@mao_ssss
2025年11月25日
李歐
高村薫
読み終わった
関係性オタクにはぶっ刺さります。と勧められた本書。
作中では膨大な時間が経過する。その中に通奏低音として「彼」の気配が漂い続ける。
彼が出てこない時間のほうが長いのに、私は主人公である一彰と同じ気持ちで彼を待ち続けた。彼を忘れることは一瞬たりともなかった。
触れ合うぬくもりがなくても、近くにいなくても、生死がわからなくても、恋焦がれることはできるのだと知った。
心臓を共有するふたり。それは比喩ではあるが現実で、同じ心臓を持つ2人の人間の関係が途切れることはなく、愛情が薄れることもない。一彰は彼を愛することで、自らをも愛し続けたのだと思う。
周りで死んでいく数多の人たちがいる中で、2人は生き続ける。五千本の桜が咲く村でこれからも生き続ける。終わりが明示されないラストはもどかしくも清々しかった。
もっともっとふたりの人生を見たいと思った。けれど、決着がつかないからこそ、これからも私の中ではふたりは生き続けるのだと思った。生死も、居所も、何も知らずとも、恋焦がれることはできるので。
