
本のまどろみ
@maatea
2025年11月25日
紅茶とマドレーヌ
野村美月
読み終わった
お菓子と紅茶の描写がとにかく魅力的だった。
マドレーヌの質感やふくらみ、焼き色。そこに漂う甘い匂いまで想像できて、読むだけで胸がときめく。カントリーな温かい空気に包まれるようで、紅茶がカップに注がれる場面なんて、白い湯気までふわっと立ち上がるのが見えるほどだった。
そして、食べ物の描写だけで終わらない“人と人とのつながり”。
お菓子が青春の記憶と結びついていたり、誰かの心をそっと押し出す役割をしていたり、物語の余白から「きっとこんなふうに思い返しているんだろうな」と想像できる。小鹿原さんの食レポも魅力的で、味わう喜びそのものが伝わってきて読んでいて嬉しくなった。
読み終えたあとに残るのは、静かであたたかい気持ち。
お菓子や飲み物って、ほっとさせてくれたり、気持ちを切り替える小さなスイッチになったりする。『エミリー』にも通ってみたくなるような、そんな居場所の心地よさがあった。お菓子を用意する時間、カップを温める時間、ああいう“準備の丁寧さ”こそが、日々をそっと支えてくれるんだなと感じた。




