雨晴文庫 "「働けない」をとことん考えて..." 2025年3月8日

「働けない」をとことん考えてみた。
いつも付箋だらけになる栗隆さんの新刊。 地元のジュンク堂さんでは労働論のコーナーにひっそりと置かれていた。ファンとしては「もっと目立つところに置いてーー」と言いたい。確かに帯には”あたらしい労働論”と書いてあるけれども。 働かない、働けない、働きたくない…について語るこの本を必要としている人が労働論の棚を覗く可能性はおそらくかなり低い。 “日本社会においてはダイバーシティと言ったところで、絶対にそこには含まれない人が一定数いるのはなぜなのかと以前から思っていたが…(中略)あくまで企業に貢献できる人材としての多様性であって、家庭や学校、あるいは地域や国家における多様性という話ではないのである。” p76より この記述の後に、同性のパートナーシップ条例はいち早く導入しつつ、ホームレスの人たちを予告なく排除するなどの渋谷区の動きを例に挙げている。 “多様性”が、人びとの生きやすさではなく社会の”生産性”を上げる文脈に回収されてしまいやすい傾向にはほんとうに辟易する。 「南の島のハメハメハ大王」の歌について、その根底にある勤勉性に対する絶対的な評価と、そうでない人への蔑視を指摘しつつ、 ”風が吹いたら遅刻して雨が降ったら休みながらもどうにか生きたり働けたり学べたりできないか。しかもそれが周縁的な立場というより、ど真ん中に存在しているものとして労働制度やシステムや価値観を組み直せないか。それは長年の私の悲願と言っていい。“ という。 気圧や気候変動に人一倍弱く体調を崩すわたしは、この主張に完全に同意する。 そしてそれが叶えば、いま、一切働けないでいる人のある程度が働ける可能性に開かれると確信する。 『ぼそぼそ声のフェミニズム』とともに、読んだ人と感想を語り合いたくなる本。
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