
まめご
@mmg_86
2025年11月29日
川のある街
江國香織
読み終わった
江國香織の小説を読むことは、私にとって一番楽しい読書だ。
新刊が出ると知り、なんとなく惜しくて読まずにとっておいたこの本を出してきた。
それぞれ異なる“川のある街”を舞台にした3つの物語。
どれも面白かったし印象的な場面や描写がいくつもあった。
例えば、8歳の女の子が川を眺めながら「川はつねにおなじ姿に見えるのに、いま見ている水とさっき見た水は違う水なのだ。」と考える場面。
これ方丈記だよね…と唸ったし、無常観をもつ女の子という存在がもう江國香織的だなと嬉しくなってしまう。
例えば、音楽の授業で「大勢で歌うとき、声は大きな一つのかたまりになり、一人一人のそれを聞き分けることはできないけれど、自分には自分の声がわかるし、時々、隣の人の声もわかる。」という描写。
斉唱する時の感覚なんて意識したこともなかったのに、この感じ知ってる!とこれまた嬉しくなる。
あるいは例えば、死にゆくカラスの描写。
そこには何のドラマも感傷もなく、生き物はみんなただ生きて死んでいくものだということを思い出させてくれる。
それは厳しさというより、いっそ安らかなことのように私には思える。
書き出せばきりがないけれど、読み終わった時の満ち足りた気持ちは他の作家では得られないものだ。
江國香織はかつて好きな作家について、同じ時代を生きて最新作を読めるのが嬉しいと書いていたように記憶している。
そして私にとっては、江國香織こそがそういう作家だと読むたびに確信する。
新刊、楽しみだな。






