花木コヘレト "非常/寒風/雪国抄 川端康成..." 2025年12月2日

非常/寒風/雪国抄 川端康成傑作短篇再発見 (講談社文芸文庫 かF 10)
「寒風」のみ読みました。北條民雄の読書会のためです。なので感想は簡単に。 島田等が『病棄て』の中で「寒風」を非難していて、つまり川端の視線は、マジョリティ側からしか北條(谷沢)を見ていない、という批判です。「寒風」を読んで、確かに島田の批判は当たっている、と思いました。川端は北條が生きていられたのは、「国家の恩恵と篤志家の慈悲」(p202)だと書いていて、これは確かにNGです。いかに文学として「寒風」が成功していようといなかろうとです。 ただ、川端はハンセン病をよく知っている、とも思いました。防護服を着ていますが、北條の遺骸と対面して、つまり、ハンセン病が弱い伝染病であると知って、その記録を言語化しています。それでもこの短編がNGであることには変わりませんが。 それでも、「寒風」は、生きるということの重さを、ずしりと読者に負わせることには、成功していると思います。物語の最終場面で、看護師が靴下を履かずに走って、そのくるぶしあたりが寒さで赤く光っていて、それが筆者に思わず涙を流させようとしました。このくるぶしの赤さは、生きている証拠に他なりませんが、これはハンセン病患者の中にも、宿っている赤さであり、光であるでしょう。私たち人間がすべからく病んでいることの、告発であるとも、思いました。
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