
saeko
@saekyh
2025年12月5日
観光客の哲学 増補版
東浩紀
「訂正可能性の哲学」と同様、わからないのに面白くぐいぐい読み進められる読書体験だった。
内容は難解で、理解できたとは言えないのでメタ的な感想しか出てこないのだが、氏の物事を構造的に捉え、ある事象の本質を異質なもののアナロジーとすることで解釈を多様に深化させていく、卓越した思考力と独創性に舌を巻くばかり。
今度こそはしっかり理解しようと1行1行気合を入れて読んでいても、その自在な発想力と広範な知識からくる仔細な記述にあっという間にふり落とされてしまう。でも、ほんの少しキーワードくらいは頭に残せたのでよかったと思う。
本書の主な主張は、AかBか、右派か左派か、ナショナリズムかグローバリズムかといった二極化した価値観がはびこる世界において、「AでありながらBでもある」というようないずれかに属しない自由なオルタナティブの提案である。そのコミュニティのウチでもソトでもなく、ただ無責任に楽しんで去っていく観光客のような在り方を肯定することで、世界をより高解像度で捉えられる、ということだろうか?
政治的には対立しながら経済的には関係性を続けていたり、反体制を謳いながら愛国心を持つというような、一見相反する価値観は共存するのだと気づくと、自分のミクロな社会生活に置き換えても葛藤が解消されて少し楽に生きられるかもという気持ちにはなった。
