にょろぞう "D坂の殺人事件(1)" 2025年10月7日

D坂の殺人事件(1)
友人から借りた。 格式の高さやら時代の違いやらを言い訳に今まで読んでこなかったことを後悔した。 久しぶりに全私がスタンディングオベーションした本当に面白い。 文章はそれこそ今と比べれば多少固いが引っかかることはまるでなく、語彙に至っては現代小説の方が難解な語彙を多用しているのではというレベル。ありがたい。 内容はミステリーながらもその謎の奥に潜む人間のグロテスクな本性、醜い営みに主眼が置かれていた印象。 もちろん事件解決のために謎は解くのだが、天才同士の頭脳比べゲームというより、罪の発覚を恐る獣(犯人)の本能的行動(トリック)を紐解き、追い詰める狩人(明智)と言う感じだった。 そしてここからが脱帽のキモなのだが、これだけ人間は弱く、醜悪で始末に負えない存在と描いているにも関わらず、そこに批判の意図が全く感じられないのが本当にすごかった。 作者も人間な以上、作品によってはどうしても好ましくない対象への批判が感じられるが、それが全くない。 淡々と人間の醜さを描き、そんなもんでしょって言っている。
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