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@nininice
2025年12月6日
読んでる
髙村薫「マキノ」 第三回
今読んでいる本三冊、期せずしてどれも海に対する深い愛情が描かれている。その中でも今回の「マキノ」は晩秋森林で伐採をしている主人公の描写と、そこから想起された海辺の描写の対比が素晴らしかった。
そうした海の生きものたちの脅威の生態が誘うのは、けっして沈黙の世界ではない海の生命の豊かさへの感応というより、むしろ人間のいない世界で繰り広げられる生命の、言葉の及ばない圧倒的な質感のようなものではないか。
この、「人間のいない世界」というものを、そのままに受け止め立ち入らず、想像するのみに留められるか、それとも、「人間あってこその世界」として立ち入るかの違いを考えながら、他の二冊も読みたい。