
jirowcrew
@jirowcrew
2025年12月8日
世に棲む患者
中井久夫
ちょっと開いた
「精神科医は「治療者」という言葉で呼ばれるけれども、実は、一種の触媒に過ぎず、よい反応もよくない反応もその上で起こるであろうが、触媒自体は、反応について多くを知ることはできず、また、その必要もないどころか、触媒の分際で局面のすべてを知ろうとすれば、反応自体が失われるだろう。つまり「いまここ」で起こっている、より大きな事態、より大きな文脈の中の一部である。」
(『精神的苦痛を宗教は救済しうるか』)
ある人物の内面を、ありのままに隈なく写す鏡。
明鏡止水とは、奢りのない心と焦りのない対象がセットとなり、はじめて機能する現象のことを言う。
治そうとする意志、治ろうとする意思のないところにほんとうの治療があるということ。
「触媒」とは、ありのままの内面を写された対象が、潜在的な意志を呼び覚まされ、中動的に新たな社会性を生成し始めたとき、それ自体としては不感症のままに、その機能を「実体もなく」発揮していると言える。