潮満希 "ここにないもの" 2025年3月9日

潮満希
潮満希
@chosekido_m
2025年3月9日
ここにないもの
ここにないもの
植田真,
野矢茂樹
初めて哲学へと触れる人にお勧めしたい一冊。 本書は、永井均さんの『翔太と猫のインサイトの夏休み』と同様に、対話篇と呼ばれる物語に近い形式で綴られていく。 主だった登場人物は、人ではなく、不思議な存在であるエプシロンとミューであり、彼らの日常は、和やかでいつでもほのぼのとしている。 しっかり者のエプシロンは、ぽやぽやとしたミューからの疑問に“常識”を以て答えていくが、あらゆるものを不思議に思うミューは、人々の考える“普通の答え”には、なかなか満足をしない——そうしたミューの考えに、エプシロンもまた考えを深化させ、新たな答えを導き出していく。 本書は、あくまでも野矢茂樹さんの考えが示された本であるため、読者の中にはその結論に納得のいかないものもいるかもしれない。しかし、哲学とは、考えることであり、その方法はまさに、本書が示す通り、対話することの中にある。 ミューの出す疑問を前に、読者自身がその答えを考え、自分なりの回答を導き出すこと——それもまた、一つの読み方となるのではないだろうか。
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