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潮満希
潮満希
@chosekido_m
趣味で文章を書いている人間。ここには、これからも大切に読み続けたい本の簡潔な読書録を綴っています。
  • 2025年3月10日
    衣巻省三作品集 街のスタイル
    街の本屋で見かけて、カバーに納められた表紙の美しさと気取らない詩の慕わしさに魅入られて購入した本。 江戸川乱歩と同時代——大正時代の作家、衣巻省三の作品集。 帯にも書かれている通り、ここに収録された詩は、どれも普段着を身に纏ったような詩である。ラフなスタイルというのは、一見すれば確かにシンプルなようにも思えるかもしれないが、それ故の美しさが、この作品には内包されている。 “作品集”と書かれている通り、詩だけでなく、小説もまた収録されている。 大正時代に書かれたとは思えないほどの新しさが詰まった作風だけに、その作家の思考にも触れたいと願うが——衣巻省三のエッセイなどが気軽に読める環境ではないことだけが悔やまれる。
  • 2025年3月10日
    ともだちは海のにおい
    ともだちは海のにおい
    Readsで初めてこの本の存在を知り、絶対に購入したいと思った本。 静か過ぎて寂しい夜の海で出逢った、いるかとくじらの物語。 活発できりりとした口を持ついるかと穏やかでやさしい目をしたくじらが互いの違いを良さとして受け入れながら、友達となるのが慕わしい。 本の形式としても、ところどころで詩や手紙、メモなどが挟まり、読んでいて飽きが来ない。 恋をして、生涯の伴侶を見つけた上で、いるかにとっても、くじらにとっても、相手が心に棲まうほどに大切な存在であるということが、ただただ“友情”という枠へとくくるのにはもったいないほどの、大きくて深い愛の形を感じさせるものだった。
  • 2025年3月9日
    霧の聖マリ ある生涯の七つの場所1 (中公文庫)
    実際に手元にあるのは、文庫版ではなく、単行本版の全八巻。 物語はプロローグやエピローグを含めて百篇の話から構成されており、これらは勿論、短編である以上、それぞれの話単体として楽しむこともできるが、実質的には連作短編にあたる。 物語は赤、橙、黄、緑、青、藍、菫という七つの色に分けられており、それぞれの場所にⅠからⅩⅣまでの数字が振られている。これは、色を数字通りに追いかけていけば、ある年代、及び、ある世代の「私」の物語として成立し、同じ数字の物語を色ごとに追いかけていけば、ある登場人物や事物を関連づけて読み解くことができる仕組みとなっている。 個人としては、赤と橙の主人公である「私」の物語が好きであり、特に橙色の物語は青春ならではの色鮮やかさ、交流、苦しみなどが丁寧に描かれ、その世界へとのめり込む形で浸ってしまう。橙色の物語に登場する秋山という登場人物が、これまた憎めない先輩であり、慕わしい。 是非とも、これからも大切に読み続けていきたい物語。
  • 2025年3月9日
    ここにないもの
    ここにないもの
    初めて哲学へと触れる人にお勧めしたい一冊。 本書は、永井均さんの『翔太と猫のインサイトの夏休み』と同様に、対話篇と呼ばれる物語に近い形式で綴られていく。 主だった登場人物は、人ではなく、不思議な存在であるエプシロンとミューであり、彼らの日常は、和やかでいつでもほのぼのとしている。 しっかり者のエプシロンは、ぽやぽやとしたミューからの疑問に“常識”を以て答えていくが、あらゆるものを不思議に思うミューは、人々の考える“普通の答え”には、なかなか満足をしない——そうしたミューの考えに、エプシロンもまた考えを深化させ、新たな答えを導き出していく。 本書は、あくまでも野矢茂樹さんの考えが示された本であるため、読者の中にはその結論に納得のいかないものもいるかもしれない。しかし、哲学とは、考えることであり、その方法はまさに、本書が示す通り、対話することの中にある。 ミューの出す疑問を前に、読者自身がその答えを考え、自分なりの回答を導き出すこと——それもまた、一つの読み方となるのではないだろうか。
  • 2025年3月8日
    美しい街
    美しい街
    尾形亀之助の詩が纏められた本。 纏められた詩を読んでみると、「明るい夜」のように温もりを伴った柔らかな夜を描く詩というのは意外に少なく、引き延ばされる夜の時間に耐えながら、朝を待ち望む詩というものが多いように思われる。 日常を愛でる詩も多く、時としては間の抜けた表現に笑みの溢れてしまうものもあるが、その作風の根底には——勿論、亀之助の生きた時代を思えば、戦時との関わりもあるのかもしれないが——なにか言いしれぬ無常感のようなものが漂っているようにも感じる。
  • 2025年3月8日
    なんだか眠いのです
    詩文集というものに憧れを抱くに至ったきっかけの本。 最近も詩集が刊行されたばかりである西尾勝彦さんの詩だけではない文章までもが詰め込まれた作品集であり、その眼差しは、のんびりとした朗らかな優しさと見つめるものへの愛に満ち満ちている。 慕わしい作品に出逢う時、その人の思考を覗きたくなる人間としては、あまりにも有難い一冊。 尾形亀之助についての論考も収録されているため、尾形亀之助に関心がある方にも、是非ご一読いただきたい。
  • 2025年3月8日
    わたしを空腹にしないほうがいい 改訂版
    大学生時代のくどうれいんさんが垣間見えるエッセイ集。 日付の記載がある通り、これはほぼ日記であり、それぞれのエッセイにはタイトルとして俳句が詠まれている。 美味しいもの、綴られる感情、人々との交流や懐かしさ——その全てが青い瑞々しさに満ち溢れ、彼女の出会ってきた一つ一つのものを、こちらも愛おしい気持ちで追い掛けたくなる。 普段、俳句にはあまり触れないが、タイトルの俳句もまた、個人としては美しく感じる
  • 2025年3月8日
    詩と散策
    詩と散策
    去年から読み始め、大事に読み進めている本。 詩を愛し、詩人になりたいと願い、過去の出来事から失語症にもなったハン・ジョンウォンさんが綴る、まさに“詩と散策”のエッセイ。 一編一編が、まるで暖炉の前にそっと腰掛け、ココアを飲みながら、彼女の話へと耳を澄ませているような気さえする文章となっており、その言葉を、一つ一つじっくりと噛み締めて読みたくなる。 ハン・ジョンウォンさんの詩は現状、日本語には訳されていないとのことだが、その表現は実に繊細で心奥に広がるような含蓄を持つ。是非とも、詩集も拝読したいところ
  • 2025年3月8日
    編棒を火の色に替えてから
    五十九歳の若さでこの世を去ってしまった冬野虹の詩文集。 集成・文芸誌からの抜粋と未収録の作品から構成された本書は、自由自在かつ繊細なポエジーで見るものを空想の世界へと誘い、その心を浮かび上がらせる。 冬野虹の集成は全三巻——素晴らしい文章作品であるだけに、そちらもまた、気になるところ。
  • 2025年3月8日
    花のレクイエム (新潮文庫 つ 3-11)
    実際に手元にあるのは文庫版ではなく、新潮社のソフトカバー版。 21世紀を前に亡くなった辻邦生が描く、一年の花をモチーフにした掌編集。 一つ一つの話は四頁ほどであるが、そのどれもが余韻を残し、新雪を踏み締めるような気持ちを心のうちに呼び起こす。 個人的には、『萩』の話が切ない中にも愛の温もりを感じるので慕わしい。
  • 2025年3月8日
    京都で考えた
    京都で考えた
    クラフト・エヴィング商會でも有名な吉田篤弘さんのエッセイ。 京都を散策する中で考えたことやそこでの思い出などが綴られており、吉田さんの表現により、読者はそこに描かれた思考や情景の世界へと引き込まれる。 神戸のことを書いた『神様のいる街』も大変良く、こちらもおすすめ。
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