
トム
@yukiyuki7
2025年6月22日
ゴリラ裁判の日
須藤古都離
読み終わった
読み終えた後に考える
「ゴリラに、人権はあるのか?」
最初は思わず笑ってしまいそうになるテーマ。でも読み進めていくうちに、それがとんでもなく重くて、深くて、そして切実な問いだということに気づく。
物語の始まりは、動物園のゴリラエリアに人間の子どもが落ちてしまう事故。ローズの夫・オマリはその子を助けようとするが、結果的に「子どもを引きずった」とされて射殺される。このシーンの衝撃と理不尽さが、すべての始まり。
ローズは“ただのゴリラ”じゃない。手話と音声グローブで人と会話ができる、知性を持った存在だ。彼女が裁判で語るのは、「命に上下はない」という当たり前のようで、実は私たちが無意識に無視している価値観だ。
最初の裁判では負ける。どれだけ理屈を並べても、社会は「人間>動物」という前提を崩そうとはしない。
でも物語は終わらない。プロレス界へと舞台を移し、再びローズは「社会と戦う」道を選ぶ。そしてついに、ローズに“人権”が認められる瞬間がやってくる。
この判決はフィクションの世界の出来事だけど、読んでいて、ものすごくリアルに感じた。「ローズが勝った」という事実は、彼女が“ゴリラでありながらも、完全に“人間として見られた”証だ。
判決を経て、ローズにパスポートが発行され、ビザが与えられ、自分の生まれ育ったジャングルに帰っていくラスト──それは単なる帰郷ではなく、「物として扱われてきた存在が、自分の尊厳を取り戻す旅の終着点」でもある。
私はこの本を読んで、「命」について、「価値」について、そして「人間らしさとは何か」について、考えさせられっぱなしだった。
人間とは何か? 命に差があるのか?
この世界の“当たり前”は、誰のためのものか?
ローズという一頭のゴリラが、読者にそんな深い問いを突きつけてくる。
奇抜なテーマだけど、読後には何ともいえない静かな感動と、未来への希望みたいなものがじんわり残る一冊だった。