
gato
@wonderword
2025年12月10日
なにも見ていない
ダニエル・アラス,
宮下志朗
かつて読んだ
これ文庫化するんだ〜!山師じみた語り口が楽しかった記憶。
↓ 当時の感想
コッサの「受胎告知」の上を這うカタツムリの考察と、ブリューゲルの「東方三賢王」のバルタザールが見つめているモノの話が特に面白かった。イエスの包皮、『眠れない夜に思う、憧れの女たち』にもでてきたので驚いたし、受肉をめぐる超重要な聖遺物で笑った。まぁ言われればそうか。宮下訳の上手さもあって、「このおっさんが言うことは話半分で聞いといたほうがよさそうだぞ」という怪しさがむしろ魅力になってするする読み進めてしまう。
はじめは西洋画に権威を感じる層が無視している画題の下世話さ、裸婦画を高尚に語ろうとする違和感を指摘していくのかなと思って読んでいたのだが、話は次第に絵画というものの核心に迫っていく。存在しないはずのもの、時間、情景を描くこと。〈描けない〉ということを描いて表現すること。「ラス・メニーナス」をめぐる最終章の語りで明らかになるのは、そうして果敢にキャンバスに挑んできた画家たちへの著者の深いリスペクトだ。