たなぱんだ "母という呪縛 娘という牢獄" 2025年2月25日

母という呪縛 娘という牢獄
まったくもって、予想外の読後感だった。 母親からの虐待の末、娘が母を殺してしまう——そんな事件を扱ったノンフィクションだから、読む前はひたすら重い展開を覚悟していた。だからこそ、気持ちに余裕があるタイミングで手に取ったのだけど、中盤までは想像以上に痛ましい母と娘の関係が描かれ、胸が締めつけられるようだった。 殺人を犯したあかりさん(仮名)は、母の期待に応えるために9浪もしていた。僕がセンター試験を受けた年、彼女もどこかで同じ試験を受けていたのだろう。そう考えると、この物語が遠い世界の話には思えなかった。だからこそ、途中まではリアルなツラさがひしひしと伝わってきた。 だけど、終盤の展開は意外だった。 弁護士団、父親、裁判官——彼女を理解し、受け入れてくれる人々との出会いの中で、あかりさんの心が少しずつほどけていく。そして、裁判官が彼女にかけた言葉がとても印象に残った。 「お母さんに敷かれたレールを歩み続けていましたが、これからは自分の人生を歩んでください」 この一言が、どれだけ彼女を救っただろうか。 重いテーマの本なのに、最後のページをめくったとき、なぜか優しい気持ちになっていた。それは、筆者の温かな文章によるものかもしれないし、あかりさんがようやく見つけた光のせいかもしれない。 そして、詳しく書くのはためらわれるけど、最後の一文には著者の粋な計らいを感じた。あれは、あかりさんのためにそっと添えられたエールだったのかもしれない。深読みかもしれないけれど、そんなふうに思えてしまう優しい終わり方だった。
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