
たなぱんだ
@tanapanda
2025年2月16日

読み終わった
感想
「誤解を招いたとしたら申し訳ない」のような政治家の無理筋な弁明が、なぜ機能するのかを議論した一冊。
そういう無理筋な弁明があることは、言語表現の豊かさの裏返しなのだと気付かされた。もちろん「言葉の豊かさは守りつつ、それを悪用した弁明を減らすにはどうすべきか」という点は考えるべきだけど、「誤解を招いたとしたら申し訳ない」が機能してしまうこと自体は、あながち悪いことじゃないんだなと少し前向きになれた。
なんとなく、全体の2/3くらいを使って展開される「否認可能性」の議論は、期待効用と主観確率のベイズ更新の枠組みでモデル化できそうな気がした。数理モデルで一般化しつつ、この本で取り上げられている様々な否認可能性の基準を具体例として扱えば、より全体像が見えやすい気がする。
引きのある話題から入って、語用論や意味論を援用して掘り下げていくスタイルなので、YouTubeの「ゆる言語学ラジオ」が好きであればハマる本だと思った。新書よりは骨太だけど、専門書みたいに事前知識を要求されるわけではないので、選書らしいレベル感。途中で議論が込み入る部分もあったけど、「これから何を主張するのか」「この章の要点は何か」が逐一整理されていて、論旨は追いやすかった。

