たなぱんだ "動物たちは何をしゃべっている..." 2025年2月4日

動物たちは何をしゃべっているのか?
動物たちは何をしゃべっているのか?
山極寿一,
山極 寿一,
鈴木俊貴
ゴリラ学の山極先生と、鳥の言葉を研究している鈴木先生の対談本。 タイトルがいい意味で裏切ってくる一冊。もちろん大部分は「動物の言葉」に関するトークなんだけど、最終章では「人が言葉にできないもの」という真逆の話題に辿り着くという意外過ぎる展開。RPGでマップの端まで行ったら反対側から出てきたかのような感覚。 たしかに意外な展開だったけれど、「何かを深く掘り下げると、その対極にあるものの理解が深まる」というのは、学問ではよくあること。異文化を研究すると自分の文化への解像度が上がるのと同じで、鳥や類人猿の「言葉」を研究することで、かえって人間の言語の特徴や限界が浮き彫りになっていくのは納得感がある。まるで、文化人類学をヒト以外の生き物にまで拡張しているかのようで刺激的な内容。 対談形式の本は、たまに読者が置いてけぼりで当事者だけが盛り上がっているやつもあるけど、この本は先生方お二人ともがいい聞き手をしているので、読みやすいし、初めて知った概念も理解しやすい。語り口も優しいので、リラックスして読める。途中で動物にまつわる雑学が出てきたり、鈴木先生が犬と散歩してるユーモラスな写真が載っていたりと、読者を飽きさせない工夫もよい。 個人的に印象に残ったフレーズは、人がいかに言葉を重視し過ぎているかについて議論している中での「言語化された情報を得ることに慣れてしまっているんですね。それで満足できると錯覚している」という鈴木先生の発言(195頁)。「言語化」がもてはやされる時代だけど、この本を読んで「むしろ言葉にできない何かこそ大事なのかもしれないな」と思わされた。
読書のSNS&記録アプリ
hero-image
詳しく見る
©fuzkue 2025, All rights reserved