
やえしたみえ
@mie_e0125
2025年12月13日
何もかも憂鬱な夜に
中村文則
読み終わった
@ 自宅
最高……。自分は犯罪加害者への支援や福祉、更生についてすごく関心があるのだが、その理由がこの一冊に詰まっている。
主人公の中の混沌とした、さまざまな記憶がぐるぐるとかき混ぜられて浮かび上がるように描かれ、山井に声をかけた瞬間、命とはなんなのか、ひとつの結論に辿り着く。
──「そうしたいからだ。俺達は刑務官だ」
(p.177)
この瞬間、主人公は真に大人になった。彷徨い続ける子供ではなくなった。恩師と同じように。
山井のしたことは許されることではない。山井は生きていてはいけない人間かもしれない。しかし山井のもつそれもまた命。その命を……。
私が重大犯罪や死刑制度や加害者福祉について考えるときの、私と彼らの差はただほんの僅かに運が良かったか、悪かったか、それでしかないだろうという直感を、この本はざわざわと撫で、罪を犯さずに生きている今に目を向けさせてくれる。
これは文学だ。死刑制度やら何やらに対する論文ではない。登場人物の考えもそれぞれ違えば、主人公でさえはっきり言語化しているわけではない。だからこそ私たちの想像力を刺激する。私たちはその空白を埋めようと考えざるを得ない。それが、文学をはじめとした芸術のよいところだと思う。
この本は、2025/11/13には友人の勧めで「気になる」に入れていたのだが、読むのが遅れて今日になった。結果的に最高のタイミングで読めたと思う。つい昨日には『名前で呼ばれたこともなかったから: 奈良少年刑務所詩集』という本を読了したばかりで、先日も『罪を犯した人々を支える──刑事司法と福祉のはざまで』という本を読んでいたのだ。どちらも素晴らしい本だったし、これらを読んでいたからこそより物語にのめりこめたのだと思う。あらすじ含め全く内容を知らずに読み始めたので、これは本当にたまたまだ。導かれていたのかもしれない。


