ぱち "大きな熊が来る前に、おやすみ..." 2025年12月13日

ぱち
ぱち
@suwa_deer
2025年12月13日
大きな熊が来る前に、おやすみ。
島本理生さんの本を読むのは2作目。 最初に読んだのは『あなたの呼吸が止まるまで』で、村田沙耶香さんのインタビューで紹介されてたのを見て気になって1年ほど前に読んだ。 性暴力がテーマの小説なのだけど、性加害を行う男性の無意識の振る舞いが細やかに描写されていて、フィクションではあるんだけどすごくリアルに感じた。 「〜してあげる」という言葉遣いを多用して相手に負債感を与えて自分が望む行動を取らなかったら怒ったり不機嫌になったりして自分ではなく相手に原因があるような言動をして、結局は相手をコントロールしたいだけなんだろうなという気持ちが透けて見えるわけだけど、その嫌〜〜〜な感じを凄く上手に描写した作品だなと思う。 さて、本作『大きな熊が来る前に、おやすみ。』は、YouTubeのチャンネル「ほんタメ」での紹介で知って最近読んだ。 こちらは3作品が収録された短編集。 直接的、言葉、間接的な暴力がそれぞれの作品で描かれている。 収録されている短編、「大きな熊が来る前に、おやすみ。」と「クロコダイルの午睡」に登場する男性がまた恋人に対して「お前」呼びする時点で嫌な予感が満々なわけだけども、予感の通り不穏な恋愛が展開される。 主人公の女性が恋愛対象にする男性が、端的に言ってことごとく自分本位で、読んでいて非常にモヤモヤするものがある。 『あなたの呼吸が止まるまで』の次に読んだから登場する男性に対して穿った見方をしてしまっているのかもしれないけども…。 でも特に表題作の「大きな熊が来る前に、おやすみ。」は、「関係が続く」話になっていて、これを希望と取っていいのか、ある種の地獄が続くようなものと見るのか、個人的にはどう受け取ったらいいのか非常に難しく感じた。(ぼくは「地獄説」を推したい) こう書いてるとまるで悪い小説だったかのように思われるかもしれないが、いい意味でモヤモヤや嫌な感じを上手く書いていて、とても心に残るというか感情を揺さぶられる良い小説だと思う。 不穏なもの、嫌な感じのもの、モヤモヤするものを接種したいという時に読むのをオススメしたい。
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