たなぱんだ "日本経済の死角" 2025年2月7日

日本経済の死角
日本経済の死角
河野龍太郎
巷でよく言われる「日本の実質賃金を上げるために、労働生産性を向上させなければならない」という議論。しかし、本書が指摘する通り、実際に起きているのは「失われた30年の間、日本の労働生産性は着実に上がっていたのに、それが実質賃金に反映されてこなかった」という問題だ。こうした事実確認をした上で、著者は、金融緩和ではなく、雇用制度や税制、企業統治などの構造的な改革こそが必要だと論じている。 エコノミストや経済評論家の中には、極端な主張で注目を集めようとする人も多いが、著者の河野氏は比較的冷静な分析を行うタイプ。細かな点をみれば、経済学の知見を十分に踏まえていない部分や論拠不足な箇所もあるが、全体としての議論の方向性は妥当だと感じた。最終的に本書の主張に賛同しなかったとしても、少なくとも耳を傾ける価値はある議論だと思う。 「賃上げ」問題や日本経済の構造問題に関心がある人にはオススメできる一冊。
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