綾鷹
@ayataka
2025年12月14日

降りる人
木野寿彦
山奥の工場で期間工として働く男性が主人公で、工場と寮を行き来する生活を描いた物語。
小説 野性時代新人賞受賞を受賞した小説とのことで読んでみた。
主人公が周りに傷つけられ、自分の状況に鬱々としていく姿が切ないが、友人の浜野の存在で救われていく。
空気が読めないけどブレない浜野というキャラクターが終始おもしろい。
最後の終わり方もよかった。こんなどうでもいいことで人は救われるのかもしれない。
自分も思い悩むことはあるけど、もっと気楽に考えてもいいのかもしれない。
『ツァラトゥストラはこう言った』をイキりラップと表現。笑 今度そういう視点で読んでみよう。
・「やり直したいとは思いませんか?」
「何をやり直すんだよ。やり直したってまた俺になるだけだろ。ゆっくり時間をかけてじわじわ俺になっていくんだよ。そんなのごめんだね」
・「ねえ、浜野の言う降人は、どうして降りる人なの?選択することを重視するんだったら、選人とかの方がいいんじゃない?」
風が吹いた。何か見えないものがせまってくる感じがした。風が通り過ぎると、浜野は答えた。
「降りるってことを意識の隅に住まわせたいんだ。まあ、実際に何かから降りると、だいたい結果はろくでもないことになる。その責任を引き受けながらも、降りるってことを肯定的選択肢として持ち続けたい」
「なんだか難しいね」
それから、一分くらい海を見て過ごした。やがて、「生きていい」
と浜野は言った。「今のお前には誰も言わないだろうから、俺が言う。お前は生きていい」
波が砕ける音がした。
「僕はどんな風に生きたらいいか分からないよ」
浜野はあくびをしながら、「しれっと生きればいいだろ」
と言った。
・なぜこんなことが起きたのだろう。おそらく、「サンドラの週末』を観る前にこのDVDを観ていて、入れ替えるときに面倒でこのケースに入れてしまったのだ。
「浜野、間違っているよ」
とつぶやいた。もう一度タイトルを見る。「紗倉まなが好きすぎて紗倉まなが彼女になってた」。そんなこと、あるわけない。思わず、笑みがこぼれた。じわじわと、おかしみは全身に広がっていった。僕は床にごろんと横になった。いつもこうだ。浜野は、僕が切々と積み上げる悩みや考えをあっさりと更地にしてしまう。それが正しいことなのかは分からない。
とにかく、今、悲しみは粉々だった。
