碧衣 "わたしたちが孤児だったころ" 2025年12月15日

碧衣
碧衣
@aoi-honmimi
2025年12月15日
わたしたちが孤児だったころ
わたしたちが孤児だったころ
カズオ・イシグロ,
入江真佐子
上海で暮らしていた十歳の頃に両親が失踪し、後年はイギリスの社交界でも名を知られる探偵となったクリストファー・バンクスは再び上海の地に足を踏み入れる。 貿易会社に勤めていた父と反アヘン運動に熱心だった美しい母。 母が抱えていたであろう自己矛盾、母の理想と父の重圧、日本人の友人との日々。子供であったが故に知らされなかったこと。 個人的にバンクスがしょっちゅう腹を立てる描写が印象に残る。 自身ではどうにもできない現実に彼は腹を立てている。それは大人になっても変わらない。 辿ってきたスリリングで緊迫した冒険の本来の姿は滑稽と思えるくらいにありきたりで残酷なほど醜悪だった。その事実にバンクスは打ちのめされただろう。自分が生きてこられたのは愛する人を穢し、辱めた者の施しの上で成り立っていたのだから。 愛する人に恩を返すことはもはや叶わなず、共に生きるべき人は自ら手放してしまった。だけど、まだ希望はある。幼くも気高い心を持つ孤児の少女との再び築き上げていく“家族”としての未来が。
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