蒼凍星 "ナイトフライト" 2025年12月17日

ナイトフライト
何軒も本屋さんを巡って、 探した。 なかった。 取り寄せた。 届いた。 読んだ。 読み終えた。 …若い。 過去の自分に手渡してあげたかった。 きっとたいそう喜んで、 この本を大切にしたことだろう。 いかんせん、あの頃の自分の未来に、 いま自分は立っている。 モノも人も、出逢うタイミングを、 コントロールする事はできない。 それは遅すぎた出逢いがどうとか、 ダイヤル回して手を止めたとかいう、 黄昏流星群的なことではない。 この本をいま手に取った事で、 思っていたよりも、 自分が遠くへ歩いて来ていたのだと わかった。 本を閉じた。 この本に出逢えてよかった。 たとえ、堀込高樹商法であったとしても。 てのひらがもしも地図なら僕たちは感情線でときどき迷う 過去なんか問わないはずのこの街で「以上でよろしかったでしょうか」 読んでいるとどうしてか、どうしても、 泰行くんの声で歌が聴こえてくる幻聴に終始悩まされながら読んだ。 帯に高樹さんの推薦文があったせいだろう、と思っていた。 あとがきを読んだところ、伊波さんも『KIRINJIがキリンジとして活動していたときから、僕の人生のさまざまな場面には、いつもKIRINJIの音楽がありました』と。 なるほど。同志であられたか。 自分が俳句を勉強する前なら、 海底にたゆたう音は人類の星の音楽に似て この歌などきっと好きだったであろうと思われた。 けれどもいまは、 たぶんもう海なんだろう側道のフェンスの切れ目がときどき光る が好きだ。 見知らぬ海の眩しい輝きと、 現代短歌に明るくないが、この歌に使われている技術のようなもの、をそれとなく感じるから。 ひとは変わっていく。 痺れる耳を澄ませろ みぞおちの奥に歌を詠まない詩人を宿すおまえとともに キリンジ 『the echo』
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