あおたむ "蜜蜂と遠雷" 2025年12月16日

あおたむ
あおたむ
@aooimmo
2025年12月16日
蜜蜂と遠雷
【感想 ネタバレ】 ありえないくらいの情報量と美しい文章で、良い意味でとても読んでて疲れた本だった。 マサル、亜夜、明石、塵の4人のコンテスタントにフォーカスされてたけど、それぞれのターンにそれぞれの味があった。特に好きなのは亜夜と風間塵。亜夜は転落からの復活という心情とか感情とか、そういった人生の物語が中心に書かれていたから、毎回の演奏ごとにすごく胸がいっぱいになった。音楽とピアノに縋りつこうとしてるその姿が必死で、風間塵とは別の良さがあった。カデンツァを即興で決めるくらいの才能があるのに、そのブランクのせいかはたまた性格のせいか、しっかりと自分を俯瞰して見れるところがいいなと思った。彼女が舞台に上がる時の表現が素敵だった。 一方で風間塵は、終始感情の表現が少なくて、まさに「何を考えてるのか分からない天才」といった感じだった。でもステージは圧巻。文字を読んでいるだけなのに、彼の凄さと恐ろしさが目に見えて分かった気がする。掴みどころがなくて野生児ぽくて、ぼーっとしてるように見えて、当たり前かもしれないけどピアノの曲には詳しくて、調律もできてっていうその相反するイメージが、風間塵がいかにチグハグなのかを物語っていたと思う。特に三次予選では、自ら編曲まで行っていて鳥肌がたった。 クラシックは全く分からないから、所々で曲を調べて聴きながら読み進めると、「これ弾いたのかあ」って思いながら入り込めて良かった。 明石や奏の葛藤も、リアルで面白かった。 音楽というどうしても才能に任せてしまう分野で、どう苦しんでどう楽しむのかっていうのが少しだけ分かったと思う。ほんの一握りの人間にしか感じることができない世界を、少しだけ垣間見れて楽しかった。 私もこんなふうに、つらくて素晴らしい世界で生きてみたかったなと思った。 この本がある限り、私は何度でも人間、音楽の素晴らしさに気付けると思う。 読み終わってからもしばらく、ずっと余韻に浸っていたいし、次の本に進みたくないと思った。この余韻を消してしまいたくないと思う。
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