
みっつー
@32CH_books
2025年12月19日
会話の0.2秒を言語学する
水野太貴
読み終わった
「言語化」という言葉をSNSなどでよく見かけるようになった。
自分が出会った事象に対して「言語化できるのがすごい」とか「言語化できるスキルが欲しい」など、頭の中でその場に適した言葉を抽出し、文字に起こしたり、口で発する事ができる人間に、人は憧れを抱き、時にはコンプレックスを意識させる。
私個人としては、人とコミュニケーションを取ることは好きだ。
相手の考え方を知ったり、どういう映画を見てきたのか、どういう人と関わってきたのか、そういう話をして知見を深めたり、時には世間とのズレをアップデートしたりしようと努めたりする。
しかし、心の中のどこかで、完全に、人と心を通わすのはやっぱり難しいと思う場面が往々にしてある。
自分の放った言葉が場の空気を止めてしまった時、相手の意見に納得できずにヒートアップしてしまって喧嘩になってしまった時、話している事が理解できなくて悔しい思いをした時、コミュニケーションの難しさを痛感する。
そのほとんどが自分のプライドや、素直になれない気持ちからくるもので、やるせない気持ちになる。
そんな時に、この本が目に留まった。
著者の水野太貴さんはYouTubeやPodcastで「ゆる言語学ラジオ」という言語学についての音声配信を行なっている方で、ちょうどこの本を読み始める少し前から聞いていた。
軽快に、楽しそうに、言葉の不思議を語る声が印象的な方が出している本なので気になってからはすぐに購入した。
この本を読んで思ったのは、自分が「心の底から言葉について考えた事がなかった」ということだ。
多少なれど、映画や小説、それに実生活においてのお喋りなどで、自分自身は言葉というものを理解しているつもりになっていた。
けれど、読んでいるうちにどんどん知らない世界に連れていかれる、というかもはや「言葉とは…?」「話すとは…?」という思いに駆られる。
でもそれが気づきや、楽しさに変わる瞬間(結構本気で分からない部分もあったのだけど…)もある。
人は「はい」と「いいえ」だと「いいえ」の方が回答までに時間がかかる話だったり、「あのー」とか「えーと」などのフィラー(発話の間に挟み込まれる意味のなさそうな言葉)のお話も面白かった。
特にフィラーに関しては、ゲーム実況を撮っている上で、意識はするけれどやっぱりどうしても発してしまう部分で、ゲームのムービー演出上カットできないことも多いため、悩まされる事が多かった。
けれど、本書の中ではフィラーはもっと「大事にされてもいいのでは?」と書かれていて少し勇気付けられた気持ちになった。
そうなのよ。
「あのー」とか「えーと」って言ってる時ってなんで伝えたら分かりやすいのか、とかめちゃくちゃ考えてるのよ。うんうん。
あとがきに書かれていた言葉をお借りすると、人が生きる上で大切なのは「歪さ」だと思っていて、人が完璧でないのは大前提として、自分の知識も、思想も、プライドや、人との関係も、それら全ては綺麗な形なんてしていなくて、いろんな形や、厚さ、色、柔らかさ、それらが違っていいのではないか。
コミュニケーションにコンプレックスを抱く時、自分たちには言葉や、ジェスチャーで、相手に伝える事ができる奇跡のような力を持っているんだと思わせてくれる大切な一冊となりました。
とにかく、楽しく、分かりやすく言語学を語ろうと試行錯誤して書いてくれたんだろうなという文章が暖かくて最高でした。
またどこかで言語学の本と自分に向き合おう。

