にょろぞう "虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA..." 2025年12月19日

虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA)
すごかった。 SFと意気込んで読んだが、それはむしろ副菜的で、主菜は現代社会にも通底する柔らかい精神の話だったように思う。けれどもその精神が出来上がったのは紛れもなくハイテクノロジーの世界故で……といった塩梅。高度なテクノロジーとどこか文学的な内向的思考のアンバランスさが、硝子の刃みたいな不気味な温かさに感じられた。 主人公はこの本の象徴だったように思った。本人は暗殺部隊で指揮を担えるほどの実力者であるが、作戦前には同僚と神の所在について話すし罪の置きどころについてさ迷う。冒頭を読んだ際、綴られる語彙がどれもあどけないと感じたのだが、それすらも主人公を伝えるための策だったのは脱帽だった。 最後に関しては色々な意見があると聞いたが、個人的には好きだった。作中で親和と相反を繰り返していた二人の対比は美しかったと思った。 本当に壮絶と言えるレベルのすごさだった。
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