
やお
@yao_tao_
2025年8月3日
ブレイクショットの軌跡
逢坂冬馬
読み終わった
2025年暫定1位。個人的直木賞。
読みすすめるごとに時系列が分かってくる、「よくまとめたな!?」と思う秀逸な構成。ピースは分かりやすく散りばめられているが、配置は瞬時には分からなくて、適度にミスリードを誘うけれどちゃんとつながる作りになっている。
”ブレイクショット”はビリヤードの第一打であり、作中のSUVの車種でもある。プロローグで車体の内部に落ちたボルトが、数奇な運命の"ブレイクショット"になっていく話か、と序盤は思うが、そうではないことが分かってくる。1台のブレイクショットの持ち主が移り変わるとともに、東京のサッカー少年から中央アフリカまで世界がつながる。そのなかで問われ続けるテーマは「良心」「善良さ」。この車に関わった人々は、みんな己の良心と向き合い、夢を思い出し、幸せに向かって再出発する。
エピローグで、本田昴(名前のセンスよ)は己の善良さに従って行動を起こす。きっとこれも何かのブレイクショットになったのかもしれない。
貧困、SNS、同性婚、ジェンダー、闇バイト等々、世界は確かにつながっていて、多面体を成している。でも人々はインターネットでその表層をなぞるだけで実態を見ようとしないまま安易に叩き、時にそれが取り返しのつかない事態のブレイクショットになることがある。
いまこの時代だからこそ、善良さへの問いが刺さった。「踊りつかれて」しかり、今年はそういう小説が多い気がする。
パズルのピースが見事ハマった素晴らしい結末。読後感はすっきり爽快というより圧巻。思わず2周した。



