ブレイクショットの軌跡

80件の記録
- ソナチネ@sonatine2025年7月10日読み終わった直木賞候補になっている、逢坂冬馬さんの3作目。 著作のインタビューで、作家の作風は3冊目までに決まるのではないか、という言葉を思い出した。 本書は、前の2作品『同士少女よ、敵を撃て』『歌われなかった海賊へ』とは明らかに異なる作品だ。前の2作品が戦争をテーマにしたものだとしたら、今作は現代社会をテーマにした人間ドラマだ。いくつかの物語が同時並行的に進んでいくが、それぞれが何処かで交わり、それを助けるのがブレイクショットという車だ。1作目で戦争という極限状態を描ききる技術に驚いたが、今作では、重奏的に積み上げた厚みのある物語にストーリーとしての強さを感じた。物語を丁寧に積み上げた先に希望か見える小説。必読書だと感じた。
- ソナチネ@sonatine2025年7月8日読んでる半分ほど読んだ。 ブレイクショットによって繋がった、それぞれの物語が幾層にも重なり、物語に厚みを持たせている。今までの著作は、高揚感が物語を駆動させる原動力だったように思うが、それとはまた違った、明らかに、異なるアプローチ。作家の作風は3冊目までである程度決まる、ということを逢坂さんがインタビューで言っていたことを思い出す。今作で確実に作風に幅が広がっている。こんな物語も書けるのか、という印象。
- はぐらうり@hagurauri-books2025年7月7日読み終わった奇跡の構成力。 直木賞候補作。結果的に今のところ全著作を読んでいることになるけれど、逢坂さんはとんでもない小説家になってしまった。要素が多すぎるはずなのにまとまっている。内容もむちゃくちゃ示唆に富む。 舞台が日本になってどう転んでいくのかと思っていたが、中央アフリカの章でこれまでのらしさも挟まれている。宮内悠介さんのように、なかなか日本人には描き切れないような世界を書ける人だと思っていたが、なんでも書けるのかこの人は。 著者の考え、かどうかはわからないけれど、登場人物たちが語ったり考えていたりする内容は自分と近く、また安心する。ラウドなマイノリティに負けず(という表現は良くない。受け入れ)、声をあげることが大事。彼らは声をあげることにしたんだから、続かないと。 受賞して、腰を据えて良作を産み続けてほしい。
- 橋本吉央@yoshichiha2025年6月30日読み終わった結局読み始めるとぐいぐい進み、最後の方は、我が家の子どもたちが『鬼滅の刃』のTVスペシャルを見ている時間に一気に読んでいたのだが、終わって寝る時間になっても少しだけ残っていたので、いつもより夜更かしして読み終えてしまった。そういう読書体験のあり方は久しぶりで、満足。 「ブレイクショット」とはビリヤードの最初のショットのことだが、本作では架空の日本車の車種名にその名が付けられ、一台のブレイクショットの持ち主の変遷とともに物語が進んでいく。 プロローグで描かれた、ブレイクショット製造工場での出来事がどうその後につながっていくのか、ということが気になりながら読むわけだが、展開が非常に巧みで、続きを読みたい気持ちが途切れない。 章ごとに視点となる人物も変わっていくので、その人物にとってブレイクショットという車が持つ意味はなにか、という通底した問いを持ちつつ、群像劇的に人物の心象描写も進み、ストーリーの流れに翻弄される感覚が心地よい。 プロットの展開や、ある種の叙述トリック的な伏線回収も素晴らしく、気持ちよく驚かされて読んだ。 作品には現代でもよく取り上げられるような社会課題的要素(投資とインサイダー取引、性的マイノリティ、自動車修理の悪徳企業、悪徳不動産業、YouTuberインフルエンサーと資産運用セミナーなどなど……)もたくさん盛り込まれており、同じ世界で起きていることとして想像できるリアリティがあるのも、飽きなくて良い。 デビュー作『同志少女よ、敵を撃て』も素晴らしい作品だったが、そちらは歴史と戦争というバックグラウンドの濃密さ、その中での人間の善悪、生と死という、人間の過去と歴史の積み重ねの地層を掘っていくような、湿度と身体感を感じる重厚さだった。 対して『ブレイクショットの軌跡』は、地層というよりは地図というか、目の前に生きることの幾つもの分岐があり、その中で自分が何を選べて選べないのか、そういう現実的な生き方のありようを見るような印象だった。 舞台も現代日本が主だし、社会の論理と正義、理想と現実の中でどう考え、行動するかというプラクティカルな判断が常にちらつくような感覚と、自分の力ではどうしようもない要素の絡み合い、とでもいうか。 それから最後に、読み物としての緻密さ、密度の高さも素晴らしかったけれど、自分としては、さまざまな苦境に立たされながらも、どうにかそれぞれの持ち場で、善良さと誠実さを失いそうになりつつもそれを取り戻す、登場人物たちのレジリエンスが読んでいて心に残った。 ままならない分岐の連続の中で、どうにか自分と自分の大切な人たちにとって最善と思える道を選べることの意味と価値を、クライマックスでは感じて、とても良い読後感だった。
- Y_KATSUKI@k2_44162025年5月18日読み終わった「最近読んだおもしろい本何か教えて」と雑に訊かれたら差し出すのはこれかな。 〈世の中にある情報って、そんなに「わかりやすく」できるものなんだろうか〉
- なつ@natsuki2025年5月17日読み終わったビリヤードのブレイクショット後の散りばめられたボールのようなそれぞれの物語が、逆再生され一つの塊にもどる、そんなエピローグは心が震えました。人がもつ強さは誰か近くの人によって作られる。「お前と友達になりたかったのに」という言葉は、一連の物語を表す言葉と感じました。577ページの大作をゆっくりと時間をかけて味わいました。ありがとうございました。
- 読書ライダー@ReadingRider2025年5月12日読み終わった2025年5月読了本「自分が直面している問題に変化はない。 だが、行動すべきなのだろう。順番に。」 自分が過去に乗っていた2台の車のことを思い出した。 素晴らしい思い出がいっぱいだった。 素敵な持ち主のところへ行ったのだろうか🥹
- コアヤ@books-88882025年5月6日買った読み始めたしばらく積んでたけど読み始めたら一気に読めた。 途中いろいろと話の展開を予想したりしながら読んだけどみんな気持ちよく裏切られた(笑)。 結末は気持ちいい初夏の夜の涼しい風みたい。 読んでよかった。
- 😴@T260G2025年4月29日読み終わった前作、前々作と打って変わって現代日本が舞台と聞いて、どんな作品なのか全然想像つかなくてすごくワクワクしていたのだけれど、期待以上の面白さだった。色んな社会問題を扱ってるけど、どれについても解像度が高くて描き方も丁寧で、テーマは変われどそこは過去作と変わらない良さだなと思った。ストーリーそのものも構成も面白くて、毎回このあとどうなるのってタイミングで章が終わって視点が変わるので先が気になってしょうがなかったし、あちこち行ってたように思えたそれぞれの視点がエピローグで綺麗にひとつの物語としてまとまったのが圧巻だった YouTubeに上がってた作者へのインタビュー動画で、あの構成にしたのはノーランのオッペンハイマーに背中を押されたからと話していて嬉しかったのと、時系列を複雑にするのは書き手にとって勇気がいることだなんて今まで想像したこともなかったので面白かった
- り@ryohei_132025年4月23日読み終わった『同志少女よ、敵を撃て』が良かったので、読んでみた。 分厚いけれど、読みやすい文章ですんなり読める。 内容は重め。 点と点が線になり、面になり、立体になっていくような話。 逢坂冬馬さん、次の作品も読みたい。
- かみかみ@kamikami35942025年4月20日読み終わったいいね前2作品とは打って変わって、現代日本が舞台の小説。一台のSUVを巡り、さながらビリヤードのブレイクショットのように連鎖反応的な歴代所有者の物語が紡がれる。作者は市井の人々の生活を描きつつ、サッカーの反則やマネーゲームなど「ズルしたり相手を出し抜いたりしてでも勝たなければ」という新自由主義を内面化した風潮、Youtuber、投資詐欺、コロナ禍、同性愛など現代日本の世相に対する問題意識を滲ませていた。表紙のカイロスの絵が物語を端的に表現している。
- tomo015123@asayou2025年4月11日読み終わったブレイクショットはダブルミーニングでビリヤードのファーストショットと架空の車種を指す。まさにビリヤードの玉が互いに連鎖して盤面を跳ね回るように複数の人生が交差し影響を与えあう。ドミノののように一つのきっかけが連鎖してストーリーが展開するのではなく、複数の要素が互いに影響を与え合っていく人の世の複雑さ。様々な人生、野望、挫折。時には理不尽な事故や他者の悪意に晒されながらも人生は続き、過去は無かったことにはならない。それでも自分が本当に手に入れたかったものは何なのか、身を置きたい未来はどこなのか、なりたい自分はどのような姿か。その答えは、納得は自分で見つけるしかないんだ。重奏的で確かな満足。
- anko@books_anko2025年4月10日読み終わった本のタイトルでもある「ブレイクショット」。 ビリヤードにおけるゲーム開始のショットのこと。 その名の通り、球が散らばるように、様々な人々の人生が転がりだす。 無関係であるように思える人々が、どこかで繋がって物語が展開していく。 車、サッカー、マネーゲームの世界…等々。これだけの話を盛り込み複雑でありながら、それを感じさせないストーリー。 とても楽しみ、深く考えさせられる読書となった。
- にわか読書家@niwakadokushoka2025年3月23日読み終わった@ 自宅いくつもの物語、何人もの登場人物、そして時間軸。 社会問題が複数入っているが、エンタメ性も高い気がした。 600頁弱だが、後半にかけて一気に加速して読んだ。
- 七瀬由惟/Yui Nanase/あーしぇ@ashe_dalmasca2025年3月22日読み終わった正直、同志少女がピンとこなかったので海賊も未読だったのですが、今作で認識を改めました。面白いです。 気持ちのよい時系列の誤認とでも言いましょうか。まんまとやられました。 ええ、個人的にはもちろん、元アイドルでプールバーにいるあの人を推します。
- かにおねがいします@shinayakani2025年3月22日読み終わった読み終わって本を閉じて、世界、よくなれ…って思ったんだけど、よくなれじゃなくて、よくするのが大事なんだ よくしよう 作中の世界がすごく“いま”に忠実だったので、リアルタイムで読むことができてよかった