八玖 "べっぴんぢごく" 2025年12月21日

八玖
八玖
@rock5104
2025年12月21日
べっぴんぢごく
べっぴんぢごく
岩井志麻子
作者が好きなので購入。  美女と醜女が交互に産まれてくる女系の一族……という設定からして最高だが、美しい故の苦しみ、醜い故の苦しみが単に繰り返されるのではなく、生きた時代、本人の資質と合わさり、どの女の因果も独自の陰惨さと一種の官能的な美しさをもって描き出されており、大変面白かった。業を背負わされたとも言える女たちが、子を孕み産む段になると揃ってどこか達観的で醒めた視点を得るのが、却って闇のほの暗さを引き立てている気がする。  初めは読者の視点に寄り添い共に村を彷徨っていたシヲが、時を経て章が重なるにつれどんどんと遠くなっていき、異界の側のモノとして見えてくるのも良い。  最後の章は新装版書き下ろしということだが、岡山を出て外界に羽ばたいてなお、始まりの宿業を繰り返してあの村に戻ってくるという対比が見事。一つ前の章(旧版の最終章)も、男女の交わりという業の根本が断たれるかと見せかけ……という構成で、どこまでも行っても逃げられない、逃げようという気すらなくしてしまうような因業の妖しい力に満ちていて好き。  シヲの父だろう太い声が時を超えて何度も「お前を逃がさん」と語りかけてくるのは、この業を繰り返すために生まれ落ちたからか、愛しい女と番った証である血を絶やしたくないからだろうか。二卵性の双子でありながら身体の一部を同じくして生まれてきた姉あるいは妹と引き離されて生きたことが、再会して睦み合い血と業を遺した後でさえ消えない執着を生ませたのだろうか。  激しい恐怖や緊迫感がない代わりに、暗く静かでどこか美しいじっとりとした読後感が残った。令和の世も、その次の世も、私には見えないどこかで竹井の血と業が続いていると思わせてくれる、最高の作品だった。
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