
やぎねこ
@calicocapricorn
2025年12月22日
短歌のガチャポン
穂村弘
読み終わった
今日君が持ってる本を買いました。もう本当のさよならなんだ(福島遥『空中で平泳ぎ』)
鯨のなかは熱くて溶けてしまいそうと輪廻途中の少女は言えり(渡辺松男『自転車の籠の豚』)
配色のおそろしきこの食卓へ残雪を踏みやってくるひと(錦見映理子『ガーデニア・ガーデン』)
ラジオ体操の帰りにけんかしてけんかし終えてまだ8時半(伊舎堂仁『トントングラム』)
誤植あり。中野駅徒歩十二年。それでいいかもしれないけれど(大松達知『アスタリスク』)
履歴書の学歴欄を埋めてゆく春の出来事ばかり重ねて(五島諭『緑の祠』)
白梅の香り立つ道ドライブす来たことあるねと亡き妻が言う(村上理一『日経歌壇2011年4月3日』)
わが仕事この酔ひし人を安全に送り届けて忘れられること(高山邦男『インソムニア』)
ガラス越し新生児らの歳を足すみんな合わせて56日(田中有芽子『私は日本狼アレルギーかもしれないがもう分からない』)
奇数本入りのパックが並んでる鳥手羽先の奇数奇数奇数(同上)
永遠に沖田よりは年上で土方よりは年下な気が(同上)
虚数なのかもしれないね 薄日さす月曜日には渚へ向かう(桜木裕子『片意地娘』)
午後九時のロッカー開く時ふいに鰐飼う家のひとを浮かべる(小守有里『素足のジュピター』)
友人らを撮りし写真を整理して一冊の昆虫図鑑をつくる(松平修文『原始の響き』)
幾何学模様の晩夏光に剥がれゆく貴女の捲れるところに波立つ千の透明な付箋(石井僚一『死ぬほど好きだから死なねーよ』)
ミルクティー見ているだけで眠くなる万有引力強まる秋は(松田梨子『リコピンがある』)

