
みっつー
@32CH_books
2025年12月22日
センス入門
松浦弥太郎
読み終わった
センス、その言葉が持つ「途方もないもの」の正体を、私は未だに明らかにする事ができていない。
電子の中や、カフェ、雑誌の表紙や、テレビの中の芸能人。
センスは至る所に、そして人の目が集まるところに存在している。
私は高校時代、毎日、購買部にお昼ご飯のパンを買いに行っていた。
するとある日、クラスメイトから「あ!購買行くよね?なんでもいいからパン買ってきて!(小銭チャリン)」と言われたのである。
あ、パシリじゃないよ!いじめとか、そういうんでもないよ!毎日行ってたから!おれ!
どちらかと言うと気になったのは「なんでもいい」と言われた事だった。
「甘い系とか、しょっぱい系とか希望ある?」と私は聞いた。
するとクラスメイトは「うーーーーん、センスで!」と言った。
おいおい勘弁してくれよ、てやんでぃ。
せめて「甘い系」なのか「しょっぱい系」なのかは決めて欲しいし、こうしている間にも人気なパンはどんどん他の生徒に買われていってしまう。
おれはポケモンパンが買いたいんだ。
デコキャラシールが欲しいんだ。
なんだかんだでセンスのあるパンが買えた(本当になんでも良かったと言う説が濃厚)ので、私はなんとかクラスの体裁を保つ事ができた。
このミッションに失敗していたら今頃、どこかの地下労働施設に送られて、毎日顔の四角い人や顎の尖った人とチンチロをしたり、鉄骨を渡ったり、蛇でいてくれてありがとう、と思っていたりした事だろう。
それから(パンの件)私は、センスという言葉が途轍もなく、途方もなく、どこか自分とはかけ離れた存在かのように感じる事が多くなった。
センスという言葉はあまりにも曖昧だ。
芸人さんの難しそうなコントを見た時とか、米津玄師の楽曲に入ってくる「クェッ」とか、しなこの存在そのものとか、そういうのがセンスなんだと私は思う。
自分にとってのセンスはなんだろう、そしてそのセンスをどうやって伸ばしていったらいいのだろう。
松浦弥太郎さんの『センス入門』は私なりの自己啓発本だ。
とはいえ、いわゆる自己啓発本とは違う。
あ、別によく見るタイプの自己啓発本が悪いとは言わないのですが、とにかくこの本は同じ意味でも違う。
この本は著者である松浦弥太郎さん自身の言葉を通して行われる、私自身との会話を楽しむ事ができる本だと感じた。
本の中で、松浦さんは何度も考えて、その閃きや気づきを共有してくれている。
口コミやランキングは当てにならない。
教えてもらったお店は行ってみる。
ネットに頼るのではなく直接人に聞いてみる。
重要文化財を巡ってみる。
自分の周りにこんなセンスのいい人がいた。
など、それらを読んで自分ならどうするか、既に出来ていることはあるか、と松浦さんの言葉が自分自身の脳に語りかけて、それが自分の意思に届くかのような感覚を覚えるのだ。
センスを磨くには、そもそも自分の強みがなんなのか、それらを発見する事ができるようになるのは、まだまだたくさんの時間をかけなくては行けないと思う。
ひとまず、この本を最後まで読んで、私が思った、私にとってのセンスの結論は、選択する事だと思った。
パンにしても、服にしても、選ぶ言葉にしても、何を選択するか、どうしてそれを選択したのか、そこに意味や理由を見出す事が出来れば、今思っている結論には辿り着く事ができるのかもしれない。
違うかも知れないけれど、今はとにかく飛び込んでみようと思う。
パンを買ってきてあげたクラスメイトよ。
あの時は意思のないパンをあげてしまって、本当にすまないと思っているよ。
もしかしたら味もしなかったかもしれない。
だってあの頃の私は「センスで!」という言葉に怯えていたのだから。
もし次、私が購買に行くときに「センスで!」と言われたら、君にピッタリのパンを選んであげたい。
そこで初めて君は本当に美味しいパンに出会えるはずだ。
『焼きたてじゃパン』小学館より全26巻、発売中である。
もう購買に行く事はない、君の元クラスメイトより。