saeko "静かな働き方" 2025年12月23日

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@saekyh
2025年12月23日
静かな働き方
静かな働き方
シモーヌ・ストルゾフ,
大熊希美
労働に生活を侵食されることに警鐘を鳴らす本はいろいろあるけれど、この本では事例紹介だけではなく、労働がやりがいや自己実現と繋げて語られるようになった歴史的背景に言及している点がおもしろかった。 古代ギリシアから労働は避けるべきものとされていたが、贖宥状の販売に反対したプロテスタントが労働を尊ぶ文化を生み出し、それが利益を生み出すことを正とする資本主義の理念と合致した。現代になると、経済成長によってCEOの収益は何倍にもなったが、社員には充分に還元されず、金銭のかわりにやりがいやモチベーションを対価とするようになっていく…というのが記憶にある大掴みな話。 やはり本を読んでいるといいのは、いままで自分が所与のものと思っていたことが、その時代の思想を反映して生まれたもので、絶対的なものではないということに気づけることだ。内面化していた価値観を相対的に捉えることができるようになる。 この本では、ワークライフバランスをとるうえでの特効薬を提示してくれるわけではない。 ただ、やりたいことを仕事にすることや、仕事で自己実現をすることが唯一の正解ではない、と説いたうえで、自分にとっての成功とはなにか、社会の期待に応えるのではなく自分自身で決めることが大切だと教えてくれる。 どんなに搾取的な競争社会を憂えたところで、いますぐにその構造が変わるわけではない。それをふまえたうえで、ある程度は適合しつつも、自分の人生を手放さないようにせよ、という極めて現実的なアドバイスだと感じた。
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