綾鷹 "六番目の小夜子" 2025年12月24日

綾鷹
@ayataka
2025年12月24日
六番目の小夜子
津村沙世子――とある地方の高校にやってきた、美しく謎めいた転校生。高校には十数年間にわたり、奇妙なゲームが受け継がれていた。三年に一度、サヨコと呼ばれる生徒が、見えざる手によって選ばれるのだ。そして今年は、「六番目のサヨコ」が誕生する年だった。 ビビりな性格なのでホラー系はほとんど読んだことないのだが、この小説は面白かった。。 ところどころゾクッとするシーンがあるが、特に学園祭のシーンはエリック・サティのジムノペディを聞きながら読んだら本当にゾクゾクした。。 あのシーンの何がこんなに怖いのか。。 全体としてはただの怖い話ではなく、高校3年の青春も描かれていてとても愛おしさを感じたし、ミステリ的要素も面白くて、一気に読み進められる小説だった。 ・「あたしは子供の頃から多かったわよー不思議よねえ、どうしてみんな転校生をいじめるのかしらねえ?田舎の方とかに転校するとね、帰り道に大勢に待ち伏せされていじめられるのよ。 考えてみると、これって不条理よね?なぜいじめる必要があるのか?身体の中に異物が入ると、ほら、いろいろ白血球なんかが寄ってきて取り込もうとするっていうじゃない、あれなのかもしれないわよね。まあ、その土地に馴染むための通過儀礼の意味があるのかもしれないししでも、要するに『異物』だからよね。知らないものだから、自分たちとは異質の空間と時間を過ごしてきたから!未知なるものは常に恐怖の対象だったからーほーんと、テレビドラマのいわゆる『謎の転校生』は、いつもなんらかの悪意と目的を持ってやってきたものね。それでまあ、いじめて、過剰に接触して、屈服させて、免疫をつけて、自分たちの中に取り込もうとするわけね」 ・「そうだよな。日本て学歴重視の割には学問の地位低いもんね」 「ねえ、知ってる?国立大学の予算の半分をT大とK大だけで使ってるんですって。そうよ、こんなに長いことつまんない勉強ばっかさせられたんだもの、あたし絶対どっちかに行って国家予算を使いまくってやる」 「津村はいちいち言うことが激しいなあ。俺なんか、しょせん小心者の点取り虫だからさ、一あ、点取り虫って言葉、なんか懐かしくない?一結構、あのあざとくてせこいルール探しみたいな受験勉強って嫌いじゃないよ。学歴社会とかみんなけなしてるけど、いきなり明日からさ、じゃあ君の好きで得意なことやって君の個性を見せてくださいなんて言われたら困るよな。そんな、僕点数で判断してもらわなきゃ困ります、って言い出す奴がいっぱいいるんだろうな。俺だってそうだもん」 「そう言い切るところが秋くんのすごいとこよね。あなた自分に自があるからそんなことが言えるのよ」 ・特定の個人を重点的に、などとポロリと漏らしてしまったのは、あの、八月の海辺での津村沙世子との会話がどこかに残っていたせいだ、と秋は気付いていた。沙世子はあの時痛いところをついていた。「どれもちょっとずつ」などと控えめに答えたけれども、本当はどれも「ちょっとずつ」どころではなかった。他人が自分の中に踏み込んでくるのが怖い他人の中に踏み込んでいくのも怖い1自分は他の大勢の人間とは違うのだー自分の心をほんのちょっとでも掘り返せば、そういう感情が山ほど転がり出てくるのを秋は知っている。自分の傲慢さ、薄情さ、小心さが、自分の撮る写真を通して他人にバレるのを彼は何より恐れていたのだ。 でも、今年の学園祭の終りには、津村と、花宮と、由紀夫の写真を撮ってやろう。 秋はその時決心した。 真っ正面から、どアップであいつらの写真を撮ろう。
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