
Suzuki
@finto__
2025年3月9日

ダンス
竹中優子
読み終わった
★☆☆☆☆
「考えなくてよいこと、気にしなくてよいこと、しなくてよいこと、そういうことが分からない私は、太郎をどんどん偏屈にさせていった。社会と自分とのバランスを器用に取ることができる太郎が、いつも頼もしかったのに、理解できるつもりでいたのに、私は空洞のようになっていった。私の空洞は、太郎を息苦しくさせた。たったふたりきりの関係の中でも、私は「馴染む」ことができなかったのかもしれなかった。
そういう記憶のもっと奥に、あったんだろうか、怖いこと、さみしいこと、うれしいこと、味わいたいと思うような瞬間、忘れたくないと思える何か。
思い出せなかった。思い出せないのに、生まれ出た言葉はもうそこにあって、下村さんがそう言うなら、きっとそうだったんだと追い風のように胸に届く。」p115

