
amy
@note_1581
2025年3月9日

灰の劇場
恩田陸
かつて読んだ
感想
一緒に暮らしていた女性二人が橋から飛び降りて、自殺をしたという事件がずっと残っていた”私”がそのことを調べて小説にしていくというところから始まる、フィクションとノンフィクションパートが交互にくる構成の1冊
なんというか恩田陸さんのノンフィクション部分が、ある事件をもとにフィクションを制作するということでその女性二人の想像上の人生に呑み込まれそうな感じもあり、そのあたりの境目があやふやになりそうで、何度か今どのパート読んでるっけ?とページをめくりかえした
その感じが自分もこの「灰の劇場」の世界に気がついたら呑まれている感じもして、今までにない読書体験だった
また恩田陸さん自身もこの女性たちも40代のなかば~後半の女性ということから、その時代のジェンダーロールや、いわゆる氷河期世代のなかで生きていくこと、生きていたことの切実さは、おそらく私には体感できないことで、可能な限り想像をして、その過酷さに胸を痛めることしかできない
また実際の事件をフィクションとすることの困難さやどうしても付随してくる罪深さ、創作そのものの業のようなものも、あの恩田陸が書いてくれているのはなんというか勇気づけられた。おもしろくて、私にとっては良い小説だった