ヒナタ "言葉のトランジット" 2025年12月18日

ヒナタ
ヒナタ
@hinata625141
2025年12月18日
言葉のトランジット
言葉のトランジット
グレゴリー・ケズナジャット
先日読んだ『トラジェクトリー』の著者のエッセイ。中東のルーツを持ち、アメリカで生まれ育ち、日本に長らく暮らしながら、インターネットのある時代もない時代も旅をしてきたグレゴリーさんの思考に浸る。 グレゴリーさんがオーストラリアのバースである女性作家の作品を見た時のこと。 〈作品に添えられた、ヒル自身の説明文によると、これらの絵に描かれているのは、一九五〇年代にオーストラリアで行われた強制的同化の政策だそうだ。先住民のコミュニティーは核家族ごとに分けられて国家が用意した住宅で、白人の指導者の下、新しい生活習慣を教え込まれたという。ヒル自身もその制度を経験させられたのだ。 ヒルの絵を見ながら、僕が到着したときから抱いていた違和感が、より明確になってくる。この土地まで広がり、その他の言葉と文化を容赦なく追い出す英語の脅威を感じずにいられない。 皮肉なのは、いうまでもなく僕が生まれた故郷にも似たような歴史があるということだ。先住民との対立は別に隠された歴史ではない。過酷な未開の地へ果敢に臨んだ開拓者なんていうイメージは、国民的な伝説となっている。日本語で「欧米」と「西洋」という言葉が違和感もなくほぼ同義的に使われているくらい、北米大陸におけるヨーロッパの植民地主義は残酷で徹底的なものだった。二十世紀に入った時点で、僕の故郷には強制的に同化させるほどの先住民はもはやいなかった。 馴染みの言葉と文化がバースにもあるということに対して僕が違和感を覚えるなら、先 に故郷の歴史から考えるのがいいだろう。〉 こういう視点にハッとさせられる。
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