
𝕥𝕦𝕞𝕦𝕘𝕦
@tumugu
2025年12月27日
麦の海に沈む果実
恩田陸,
笠井潔
読み終わった
恩田陸による学園ミステリ。北海道の湿原に囲まれた、隔離された学園で起こる連続不審死に巻き込まれてゆく少年少女たちの話。
『三月は深き紅の淵を』を先に読んでおくと、三月〜のギミック込みでたのしむことができる。
章の中もこまかく話が区切ってあり、きりよく読みやすい。贅を凝らした学園の中には常に不穏な空気が漂い、本来ならば必ず三月に来るはずが、いわくつきの「二月にやってきた転校生」として鳴り物入りで転入してしまった理瀬の戸惑いや苦悩は、第十五章で爆発的に収斂し、ドミノ倒しのような悲劇を伴って終わりを迎える。
以下ネタバレあり
自分自身を忘れてしまい、戸惑い振り回されるばかりだった理瀬もまた、黎二と麗子、二人の少年少女の死とともに終わりを迎える。まるで彼女の「輝かしい少女だった時代」もまたここで終わったのだ、と言わんばかりに、すべての記憶を取り戻した理瀬は颯爽と学園を後にする。
25年前に発表された作品のため、現在の著者の作風がどうなっているかをまだ知らないものの、少女および少女時代に対する神聖視が強固すぎること、性別二元論的な表現が強いこと(特に麗子の掘り下げに関しては弱く感じる)ことが気になった。

