
窓
@mado
2025年12月28日
川端康成異相短篇集
川端康成,
高原英理
読み終わった
この本を読んでからずっと川端康成のことを考えている。
手に取ってすぐに、自分がこれまで川端康成という小説家の本を読んで来なかったことを心から後悔した。
なんと言っても冒頭に収録された「心中」からもう激ヤバい(語彙力喪失)。
見開きで完結する掌編にも関わらず破壊力が強すぎる。
一読してからというもの、すべての言葉が、文字が、棘のように目に刺さって抜けない。
他にも「地獄」という短編が凄かった。
「私は七年前に死んでいるが、生き残っている友人の西寺とときどき短い話をする。」という一文目からして凄まじい。先の見えない会話劇に引き込まれて、繰り返し何度も読んだ。余白が大きい作品だけに、読み返すたびに心細さが増していく。
こんなにもインパクトがあり、かつ考察しがいのある作品なのだから、わたしが知らないだけで世の中はとうに「地獄」の話で持ちきりなのだろう、とネットやSNSを検索したが、不可解なことにあまりこの作品について触れられていないようだ。おかしい。この作品について誰かが語る言葉をもっと読みたいのに。論文なんかを読むしかないのか。
この本には、死んでいる人、死にゆく人、すれ違う人が大勢出てくる。二人以上の人間が登場しても、大抵の場合は会話も噛み合わず、視線も混じり合わない。存在がぽんと放り出されて物語が始まり、そのまま終わる。恐ろしいほど精緻に情景だけが切り取られる。小説を読んでこんなに身の置きどころのない気持ちになるとは思わなかった。まだまだ未読の作品ばかりなので、これから川端作品を読むのが楽しみだ。
