
なにわ
@shidunowodamaki_32
2025年12月29日
増補 害虫の誕生
瀬戸口明久
読み終わった
環境史を専門とする筆者が、日本における「害虫と人間の関係の歴史」について論じている。
「害虫」という概念は近代の産物である。もちろん近代以前も、人々は農作物を害する虫に悩まされていた。だが、「害虫」という言葉はなく、それらはたたりなど、人間の力を超えるものと考えられていた。その例として「虫送り」や、「駆虫札」がある。
しかし明治維新が起こり西洋科学が流入すると、そのような儀式は無知蒙昧なものとされ、政府は警官を動員し、農民に強制的に害虫防除や様々な農業技術を実行させた。さらには農民の自然観を変えるため、「害虫駆除唱歌」を作ったり、賞金付きの「害虫取り競争」を行ったりした。
また、植民地獲得や近代都市化でマラリアやチフスが流行すると、それらの病気を媒介する虫も「衛生害虫」として排除の対象になった。さらに、戦争のために開発された毒ガスが殺虫剤に応用され、その逆の動きも起こった。
現代では当然の概念も、近代化によって作り上げられたものなのかもしれない、と身の回りの生活を見直すきっかけになった。また、自然が改変され、監視される現代において、「自然と人間の関係」はどうあるべきか、考えさせられた。